平成27年度決算特別委員会における総括質疑答弁について
【平成27年度決算特別委員会】
★★総括質疑★★
1 周産期医療体制と妊産婦支援(産前産後ケア)について
(1) 周産期医療体制の取組について
県では、国の「周産期医療体制整備指針」に基づき、平成23年2月に「岩手県周産期医療体制整備計画」を策定し、計画に基づき対策を推進してきた。また、4つの周産期医療圏を設定し体制の整備に取り組んでおり、分娩可能施設は32施設となっているが、施設のない市町村は22市町村で、アクセス支援を行う市町村は増えたものの、その地域の妊産婦は域外への通院を余儀なくされている。
日本医師会総合政策研究機構(日医総研)の妊婦向け調査によると、産科医療については90%が満足と回答しているものの、産科医不足のニュースからお産に不安を感じる人は78%という結果となっている。
こうした状況がある中、これまでの県の周産期医療体制の整備に向けた取組状況と課題についてどのように認識し、今後の施策をどのように実施していくのか。 産科医数、助産師数、分娩取扱施設数の状況と併せて、知事の考えを伺う。
【答弁】
A. 《知事》
県内の産婦人科医師数及び就業助産師数について、平成22年と平成26年を比較すると、産婦人科医師数は94名が100名に、就業助産師数は349名が370名にそれぞれ増加している。
一方、分娩取扱施設数は、平成22年の40か所から平成28年は32か所に減少しており、低出生体重児等のハイリスク出産の割合は増加傾向にある。
このため県では、これまで県内4つの周産期医療圏を設定し、医療機関の機能分担と連携の下、分娩リスクに応じた適切な医療提供体制の確保を図ってきたほか、医療機関と市町村が妊産婦等の情報を共有する周産期医療情報ネットワークの運用や、超音波画像による連携診断体制の構築など、ICTを活用した医療連携を推進し、周産期医療体制の充実に努めてきたところ。
今年度、新たな医療計画における周産期医療体制を検討するため、県医師会や関係大学、周産期母子医療センター等の医療関係者による検討組織を立ち上げたところであり、そこでの議論を踏まえて、県の取組を進めていく。
(2) 産科医や助産師の人材確保や育成、勤務環境について
医師数に占める女性の割合は年々増加しているが、中でも産科医に占める女性の割合は著しく増加しており、20代後半〜30代前半において産科医に占める女性の割合が60%を超えている。
先日、県医師会主催の女性医師や医学生との懇談会に出席したところ、育児がしやすい環境が整いつつある一方、育児休暇取得のためのマンパワー不足の現状を挙げられ、女性医師への支援が急務との提言があった。
私は、地域偏在や医師不足の解消がなかなか困難な中、周産期ネットワークの構築や、医師、助産師の勤務環境の整備が重要と考える。
そこで伺うが、産科医や助産師の人材確保や育成の状況、勤務環境の現状をどのように把握し改善などに取り組んできたのか。また、特にも女性の産科医や助産師に対してはどのように取り組んだのか、併せて伺う。
【答弁】
A. 《副知事》
産科医や助産師の人材確保等についてでありますが、
① 産科医や助産師は分娩対応を24時間体制で行う必要があるが、産科医の不足やハイリスク出産の
割合が増加するなど、産科医や助産師を取り巻く勤務環境は大変厳しい状況にあり、安全な出産に必要
な人材や医療の質を確保していくためには、勤務環境を整備していくことが重要であると考えている。
② 委員ご指摘のとおり、近年産科医を中心に女性医師の割合が増加してきており、医師確保に向けては、女性医師の就業支援も重要であることから、県では、夜勤時のベビーシッターの派遣や、育児休業後の職場復帰研修、夜間保育や病児保育を行う院内保育所への補助を行っているほか、産科医や助産師も含めた医療従事者の勤務環境を改善するため、保健福祉部内に岩手県医療勤務環境改善支援センターを設置し、医療機関の課題に応じたアドバイザーや研修講師を派遣するとともに、勤務環境改善に係る設備整備等に対する補助等を行うなどの支援を行っている。
③ また、助産師の人材確保や育成についても、看護職員修学資金の貸付け枠を拡大し、その養成と県内定着に取り組んでいるほか、新生児蘇生法や、ハイリスク妊産婦のケアなどの実践能力の向上に向けた研修を行っている。
④ 国においては、本年10月に「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」を
設置し、医療を取り巻く環境の変化を踏まえた望ましい働き方についての検討が始まったところであり、これら
の議論等も踏まえながら、引き続き医療機関における勤務環境の改善の取組を支援していく考えである。
(3) 妊娠出産包括支援(産前産後ケア)の充実について
核家族化、地域の繋がりの希薄化等により、地域で妊産婦やその家族を支える力が弱くなり、妊娠出産子育てにかかる妊産婦等の不安や負担が増えている。こうした中、国では、各地域の特性に応じた妊娠期から子育て期に渡るまでの切れ目ない支援の充実を図ることを重点とし、県でも平成27年度から妊娠出産包括支援事業を開始した。
先日、平成20年に世田谷区が開設した全国初の医療機関でない産後センター桜新町を視察しました。また、山梨県では都道府県では全国初の産後ケアセンターを今年2月に設置。本県では10月に民間団体が花巻市に産後ケア施設を開設している。利用者の話などから、ニーズの高さが伺われる。
そこで伺うが、県の周産期医療を取り巻く環境の中で、妊娠、出産、子育ての切れ目ない支援には、児童虐待防止にもつながる産前産後ケアの充実が必要と考えるが、「妊娠・出産包括支援推進事業」や「産前産後ケア」に対する取組状況と課題、今後の方向性について伺う。
【答弁】
A.《知事》
① 妊産婦に対する支援については、母子保健法上、市町村の事務とされており、県では、市町村相互間の連絡調整や、市町村に対する指導、助言その他必要な技術的援助を行うこととされています。
② 市町村では、妊娠、出産に伴う健康診査や保健指導を実施しているところであり、これらに加えて盛岡市と遠野市では、妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援を提供する子育て世代包括支援センターを設置し、国の補助事業を活用して、母子保健や育児に関する相談支援事業や妊婦教室、授乳・育児指導等を実施しています。
③ 県では、母子保健事業に従事する市町村の保健師等を対象とした研修会や、産後うつ事例検討会を開催するなど、妊産婦の支援を担う人材の資質向上に努めているところであります。
④ 妊産婦の心身の安定や児童虐待防止には、委員御指摘のとおり、産前産後のケアが有効でありますことから、市町村の取組を一層拡大する必要があると認識しております。
⑤ 国においては、子育て世代包括支援センターを平成32年度末までに全国の市町村に設置する方針を示しており、これらの動きを踏まえて、県においては、先進事例の紹介や研修会を開催するなど、引き続き、取組の拡大に向けて支援していく考えであります。
2 不妊治療に対する支援について
「体外受精」で生まれた子の数は、2014年は過去最多の4万7,322人であることが、日本産科婦人科学会のまとめで分かった。約21人に1人が体外受精で生まれたことになり、治療件数も過去最多を更新し、39万3,745件となっているという。
不妊で悩む夫婦は、増加傾向にあり、多くは母体の高齢化が原因と言われているが、20代の不妊も増えており、また不妊の原因の半分は男性にあるという状況である。
当事者が声に出しにくく目には見えにくい妊活・不妊治療に対する社会や職場の理解が必要と感じている。
本県は生殖医療の専門医や医療機関が少なく、専門医を養成する環境も不十分で、多くの患者が県外での治療を余儀なくされているのが現状であるが、今年度から岩手医科大学に、生殖医療専門の先生を迎え、不妊治療に携わる医師、不妊カウンセラーの養成、卵子の老化など晩婚化による不妊リスクの啓発などが期待されている。
そこで伺うが、県内の不妊治療の現状と課題についてどう認識しているか、平成27年度から開始した男性不妊治療の助成状況、各市町村独自の支援状況と併せて伺う。
【答弁】
A. 《副知事》
不妊治療に対する支援についてでありますが、
① 体外受精や顕微授精を行います特定不妊治療の助成件数は、年々増加しておりまして、平成27年度の助成件数は1,052件でございまして、前年度比112件、11.9%の増となっております。 この約6割が県外医療機関を受診しております。
② 県内で特定不妊治療を行っている2か所の医療機関のうち、岩手医科大学附属病院では、今年度、今委員からも御紹介がございましたが、新たに生殖医療専門医の認定を受けました医師が着任いたしましたことにより、生殖医療の機能強化が図られ、治療件数の増や人材育成の推進が期待されるところでございます。
③ 特定不妊治療につきましては長期的な受診が必要な方もおり、仕事と治療の両立に関する社会的理解や、早期に治療を開始することが有効であることなどの普及啓発が必要であると考えております。
④ このため、県におきましては岩手医科大学に不妊専門相談センターを委託設置しておりまして、不妊相談等を実施しておりますほか、県政番組などの広報媒体を活用し、特定不妊治療費助成の制度改正の周知や不妊の原因などに関する正しい知識の普及啓発を行っているところであり、引き続き、専門医師等で構成いたしております不妊治療協議会の意見等も踏まえながら、不妊に悩む方々への支援を行って参ります。
⑤ また、男性不妊治療の助成につきましては、昨年度、国の取組に先駆けまして本県独自に創設いたしました男性不妊治療費助成も含め、平成27年度は9件、平成28年度は10月末現在でございますが3件の実績となっております。
⑥ なお、市町村独自の支援については、県の助成に一定額を上乗せするなど、31市町村で実施しているところでございます。
3 防災減災対策について
(1)災害に強い森林や山の管理について
これまでの委員会等でも、自然災害の被害を少しでも食い止めるためにも、土砂災害防止や洪水緩和等の機能を有する森林・山の管理、治山事業や地すべり防止事業などが重要であることを訴え続けている。
県の山地災害防止機能の確保が必要な区域数は県全体で3,865区域あるとのことだが、それらの整備状況を含め、森林・山の管理等の事業について、今後の防災減災対策の中で適切に位置付けて取り組んでいくべきと考えるが、県の認識を伺う。
【答弁】
A. 《知事》
災害に強い森林や山の管理ということでありまして、
① 森林は、土砂流出の防止や水源のかん養などの多面的な機能を有し、これらの機能が十分に発揮されることが重要でありますことから、これまでも防災減災対策としての森林整備に取り組んで参りました。
② 本県の山地災害防止機能の確保が必要な区域数は、3,865区域でありますが、このうち平成27年度までに2,089区域で整備を進めており、その着手率は約54パーセントとなっています。
③ 度重なる大雨災害などに見舞われるなか、森林の整備と保全の重要性が一層高まっており、今後とも、森林所有者や林業関係者と一体となって災害に強い森林づくりを進めるとともに、治山事業や地すべり防止事業を計画的に推進するなど、山地災害防止機能の確保・強化に取り組んで参ります。